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A history of our GTP research
GTPグループリーダーの一人佐々木敦朗(シンシナティ大・准教授; 慶應義塾大・特任教授)は、Gタンパク質のRASを研究するなか、GTP変動の挙動がATPと違うことに強いギモンを覚えました。なぜGTP濃度には大きな幅があるのか?教科書に記載はなく、論文にも見つけられず、ハーバード大の著名な研究者に聞くも回答は得られませんでした。
見落とされてきた何か大事なものがある。たとえば、GTP濃度を感知する仕組みや、未知のGTP制御システムがあるのではないだろうか?佐々木は新たなGTP研究への道へ進むことを決意しました。GTPセンサーがあるとすれば、GTPに結合するはずだ。ならば、GTPに結合する分子を同定してみよう。これが今のGTP研究につながる第一歩となりました。
図 GTP固定化ビーズを用い、GTPと結合するタンパク質を細胞内から探索、PI5P4Kβを発見。
佐々木が釣り上げたGTP結合性分子には、イノシトール脂質キナーゼPI5P4Kβがありました。PI5P4Kβはノックアウトマウスの解析から、代謝やがんに重要なことが分かっていました。しかし、ATPを好むはずのキナーゼがなぜGTPに結合するのだろうか?GTPを使う生理的な意義は?疾患とのつながりは?大事な問いですが佐々木は壁にぶつかりました。
GTPバイオロジーを進めるためには、原子レベルでのGTP認識機構の理解が必要です。そして、構造情報に基づいたGTP結合変異体や阻害剤などの開発があり、はじめて細胞や個体での役割、そしてGTP認識性の進化について解析が可能となるのです。
ここに運命的ともいえる、NMRと創薬科学のエキスパート竹内恒(東大・教授)、そしてX線・クライオ電顕などを用いた構造解析をリードする千田俊哉(KEK・教授)との出会いがあり、佐々木・竹内・千田をコアとしたGTP研究をギークに行うチーム、GTP-GEEKSが生まれました。2011年の誕生から、GTP-GEEKSは分野の垣根を超えたサイエンスを合言葉に、生理学的、多層的オミックス、合成生物学、計算科学、進化生物学、ナノ定量生物学、など様々なエキスパートが仲間になっています。国内外でもGTPワークショップを開催しています。GTPにギークにフォーカスした唯一無二の研究グループ。様々な分野のエキスパートが和と輪の精神で繋がり一つの集合体となった研究グループ。それがGTP-GEEKSです。これまでの研究からGTP濃度変動が生み出すシグナルがあり、生命のロバストネスや進化に付随する生命の新たな機能獲得を生み出すために使われていることが見えてきつつあります。この解明へ医療・産業への応用を目指し統合的GTP生物学を展開しています。
左から:千田俊哉 教授、竹内恒(こう) 教授、千田美紀 特任助教。 実験を行ったフォトンファクトリーにて